陶芸窯の選び方
  灯油・プロパンガス(自然蒸発式と強制燃焼式があります)・都市ガス(強制燃焼式)・電気、窯の燃料(熱源)はいろいろ。それぞれに特長があります。
さあ、どれにしよう?

 まず、窯を置く場所と環境  
 

煙突が出せない場所でもある程度の換気さえ出来れば、「電気」なら大丈夫。
お隣が近くて、絶対に煙はNG、だと「灯油」はちょとムリかも。
 (煙はほぼ出ませんが、「絶対出ない」とはいいきれないのです、、、
   いくら上手に操作しても、煙突出口には「スス」がつきます。
     …「ってことは煙出てるんですよね?」といわれると、
     「出てます」というしかないんです)
 もう少し待っていてください。煙の出ない灯油窯が開発されています。
   (現在発売されている機種は燃費がかなり悪化しますが、今度のは大丈夫)
住宅集合地では、都市ガスはつらいことも。
  夕ご飯の支度など、まわりのおうちが一度にたくさんガスを使う時間帯に、
    窯の分が足りなくなることがあります。
     窯は「住宅」としての想定よりかなりたくさんのガスを使うのです。
 

 
 窯の特長を燃料別に見てみましょう  
  表にしました。星の多い方が優秀、というふうに見てください。

ガス窯には、自然燃焼式と強制燃焼式とがあって、バーナーの構造や炎の燃え方が違います。
自然燃焼式は 、ガスが細い穴から出る勢いで空気(酸素)を取り込んで燃える方式。家庭にあるガス台と同じ構造のバーナーで、たき火のような優しい炎です。
強制燃焼式は、送風機から空気(酸素)を送って ガスと混ぜて燃やす方式。家庭にあるファンヒーターと似た構造のバーナーで、勢いのある炎です。
 
 ※燃料費について
 

電気が高いのは、契約した電気容量に応じて払う基本料金が上がるから。
同じくらいの大きさの、10kwの電気窯と0.2m^3のガス、灯油の窯とで比べてみましょう。
まず、電気窯から。
10kwを単相200Vで契約すると基本料金が3,780円上がります。ひと月に素焼き1回本焼き2回焼成して、本焼き一回分が1,512円(※1)。
電力料金は約760円(※2)で合計約2,272円、となります。
プロパンガスだと本焼き一回のガス使用量は18kgで、約2600円
都市ガスだと20m^3で約2300円
灯油は20リットルで約1000円
   ※数値は当社調べ。価格の変動や地域、契約条件による違いがあります
   ※ ガスの価格に基本料金は入っていません。
  ※1:素焼き一回分は半分の756円としました。
  ※2:時間帯別契約で夜間に焼成したとき。
      昼間だと2,350円 、基本料金分と合わせると約3,862円

「電気は高い」というのが常識になっていますが、月2回・夜間電力で、という条件だとガスと変わらないことがわかりました。でも、窯を使わない月も基本料金は払うので、トータルで考えると高くなるんですよね。

家庭の工房に窯をおいた場合で比較をしました。工場や公共施設などでは条件が変わることがあります。
 

 
 ※窯からの排出ガスについて。  
  ●ダイオキシン
 でません。通常の陶芸用の材料(粘土、釉など)にダイオキシンの元になる物質が
 含まれていませんから、出ることはありません。
●NOX(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)
 出ると考えられます。量は窯の焼き方(酸化、還元、炉内温度)によってかわります。
 HCやCOは還元雰囲気を作るためにわざと発生させていますが、
 煙突などで外気に触れてほとんどが燃える(水・H2Oと二酸化炭素・CO2になる)
 と考えられます。
 
 ※CO2(二酸化炭素)排出量について  
 

地球温暖化、気になりますよね。窯はたくさんの燃料を使いますが、少しでも少ない方がいいに決まってます。そこで、燃料費と同じく、0.2m^3くらいの窯で比べてみました。本焼き一回で、
  灯油      63kg
  低燃費灯油窯  53kg
  プロパンガス  57kg
  都市ガス    47kg
  電気      42kg

くらいのCO2が出ることになります。
2段目の低燃費灯油窯は窯の構造を変えて燃料の消費が少なくてすむようにした窯です。
 (いずれもカタログの燃料消費量から、環境省の排出係数を用いて当社で試算しました。電気については、この係数に発電で出る分が考慮されているようです。粘土や釉から出る量は含まれていません。)

ちょっと難しいお話。
個人的には電気窯ってもっとCO2が少ないと思っていました。火力発電の効率が悪いのと送電でのロスが大きいらしく、単位熱量あたりの排出量は、都市ガス:0.0513 kg-CO2/MJ、に対して電気:0.105 kg-CO2/MJ、とほぼ2倍もあります。ただ、陶芸窯の場合、電気窯はガス窯や灯油窯のように排気を外に捨てないので効率がよく、その分でかろうじて排出量が少ない、って感じでしょうか…。ところで、電気って、使用量の少ない夜間は火力発電を減らして全発電量を少なくすることが知られています。ってことは夜間は火力発電の割合が小さくなる分、排出係数も小さくなるはずです。CO2の少ない焼成のためには、電気窯は夜間に使用した方が良い、ということですね。23時から7時(時間別料金が安くなる時間帯)に一番電気を使う温度帯(高温部分)がくるようにするのがいいでしょう。 地球環境とお財布のために。

 
 で、結局。  
 

楽ちん派さん・環境派さん は 電気窯自動制御。
楽しみ派さん・経済派さん は 灯油窯。
トータルバランス派さん はガス。

 …っていうことでしょうか。
 

 



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